1,000㎡程の菜園を店舗スタッフによる少人数で管理、収穫しカフェで活用できるよう計画。
クライアントのブランドコンセプトに併せ、地域資源の活用、目に見える表層の美しさだけでなく内面から湧き上がった美しく健康的な庭。かつなるべく手が掛からないで済み、野菜やハーブと草花が共存する自然に溶け込んだ菜園を目指した。
2023年春、枕木の舗装工事とともに、暗渠を入れ水捌けの改善、土質改良するため、砂質土と火山礫のすき込み、部分的に菜園枠を使い、緑肥と切り離した。
服部さん、店舗スタッフに育てて貰った苗を植えた。
その年8月(植え付け2ヶ月後)、水捌け改善の効果は目に見える様に植物は良く成長し、
スコップもだいぶ楽に入る様になった。
今年は目標の半分ほどの菜園化。無理をせず時間を掛け土を耕し、地域の仲良くなった友人と協働して庭をつくり、良い土、よい人を育てていく。
[使用材]
枕木_キハダ、クリなど広葉樹を製材して貰った枕木
木スツール_造船所で船を固定する為の楔の端材を磨いてつくったスツール
※共に厚沢部にある広葉樹専門の製材屋さん
[樹木・草花]
既存樹移植_プルーン、イヌエンジュ。スモークツリー、ピンクネコヤナギ、アロニア、ブルーベリー、スグリ、宿根草、ハーブ・野菜、芝(種)
[菜園計画]
「ICOR NISEKO」の敷地は蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山の西側の山裾に位置している。
土地の経歴を調べて行くと、敷地の平地は町の水道工事で出た土を集めつくられた地形と分かった。
この周辺の土質は重粘土質で水はけが悪い。また建築工事による車両によって踏み締
り、乾くとガチガチに硬くなりスコップも入らない。建築当初(2021年)は表層をトラクターで耕耘し、緑肥にシロツメクサを撒き、宿根草や野菜苗を植えてみたが水が捌けずに根腐りしたり、シロツメクサに負け壊滅的だった。
この菜園計画2019年から始まり温めてきた。友人に勧められパーマカルチャー(以下PC)を学びに行ったこと、敷地の近くのトマト農家に出会い話を聞いたことが、計画の大きな主軸となった。PCの授業、仲間との共同作業の中で、土の中の微生物が植物の根と共生関係にあり、有機物を分解し植物が吸収できるようにすることを学んだ。トマト農家の取り組みは野菜づくりに「発酵」の概念を取り入れ、野菜それぞれにつく土着菌を活性化させて大地を発酵させる。トマト農家曰く、「土が健康」=「土着菌が健康で豊か」であり、出来上がるトマトは美味しくなる。味覚や視覚、五感を介することによって土の中の健康状態が分かるという。
土の中の微生物が健康的に住みやすい環境を整えてあげることが鍵であり、その状態を保つことが本当の意味で永続的でかつ内面から美しい庭がつくれるのではという考えに至った。そして今まで庭のつくり方の最後にしていた、「土壌」を育てることを最優先に考えるようになった。
トマト農家は「人だけが自然の循環のスピードを経済に合わせてコントロールすることが出来る」と教えてくれた。「ICOR NISEKO」の取組みの根底にあるのは、困難と向き合う人の知恵。地域資源で自給自足を目指す循環活動である。私が考える良い庭とは5年後10年後もますます良くなり、維持管理に無理がなく、作者不在のそこに暮らす人の人柄が感じられる庭。そのために必要なのは、土を育て、植物を育て、人を育てていく、3本の柱だ。「小さなものを中心に考える」と植物の根と菌の共生関係のように、すばらしい仲間とつながり広がっていく。
[初年度の試み_2021年]
・土壌診断を行い養分検査は全体的に十分、微生物量診断は偏差値50程。
・植物は土着菌の共生を考えると敷地内でその土地の土、気候、水で育てたほうが植え付け時になじみやすく、有機種子や代々種取りして環境に適応した品種になるように固定種の種を使い、苗を育てた。
・土の改良に準備したものとして敷地内の草木の剪定ゴミ、蕎麦屋や米農家から分けて頂いたそば殻、籾殻、米糠、敷地の土、湧き水を混ぜた堆肥づくり。廃棄されるそば粉、敷地から採取した糸状菌のついた落ち葉で店舗スタッフとみんなでボカシ肥をつくっておいた。
[2年目の試み_2022年]、雪解け後は亜麻の花が良く咲いてくれたが、緑肥の繁茂による花苗が負けてしまったこと、6~7月は雨が多く,水はけの悪さによる根腐れが課題となり8月に縦穴掘り、水はけの向上と緑肥との差別化による管理性の向上を目的としたレイズドベッドを試し、雪の降る前に緑肥のすき込み、落ち葉、籾殻、剪定ゴミを集積し雪の中で半年程ゆっくりと寝かし来春に備え堆肥化した。